シャンクスの目的は「戦争を終わらせること」です。
戦争を止める仲介人として来ました。
そのため戦争の終盤に来たわけだから、そもそもエースを助けようと思ってません。
それに一度忠告をしています。
シャンクスは頂上決戦前に白ひげの船に出向き、「エースを止めてくれ、いま二人をぶつける時ではない」「黒ひげから手を引け」と直談判したが白ひげは断っている。
その時点で決裂しているのでエースを助けるためには来てません。
いまの黒ひげにエースは勝てないことも分かっていたと思いますが、
戦争を終わらせるために来ました。
ルフィは新しい時代の為に守ったという感じでしょう。
ストーリー全体は面白かったですし、
エースの死に場所もあそこで良かったと思っていますが、「大切な人を馬鹿にされると引き下がれない」というエースの性格がそれまで描写されていなかったので、
赤犬に食ってかかった結果・・・という展開には強引さを感じました。
エースの性格は白ひげの制止を振り切ってティーチを追いかけた時点で描写されていたというご意見もあるかもしれませんが、
私は「自分の隊のメンバーが家族殺しという大罪を犯した」
「エース自身も万全の状態だった」ティーチ追跡時点と「そもそも敵である海軍大将に煽られた」
「自身は直前まで海楼石の手錠に繋がれて弱っており、傍に満身創痍の弟もいる」
頂上戦争では状況が違いすぎると感じ、「エースってこんな時に状況判断もできないやつだったの・・・?」という戸惑いを感じました。
エースの引き下がれない性格をもっと早くからしっかり見せてくれていたら、
あるいはそれまでに描写されていた性格に沿った展開が描かれていたら、
もっと納得して読めたのに・・・ともったいなく思います。
私はエースの死因を、赤犬の挑発を聞き流せずに立ち向かう、
というエース自身が原因のものにするより、
戦場から離脱する最中に力尽き動けなくなったルフィを庇ってエースが死んでしまう、
という形にした方が良かったのではないかと思います。
これは、頂上戦争に殴り込むという無謀な行動に対して、
ルフィが支払った代償が軽いのではないかと考えていること、
そして弟であるルフィを庇ってエースが死ぬことが、
白髭とエースの関係性を描写することになると考えていることが理由です。
女ヶ島からマリンフォードに向かうまでルフィが戦ったネームドのキャラクターたちは、
ほとんどがルフィより格上であり、
あの時点では全力を出してもルフィは敵わない強敵ばかりでした。
そういったいわば場違いのステージにルフィが挑むことになったのは、
兄弟であるエースを助けたいというルフィ本人の強い願いがあったからです。
これは客観的にみれば当時のルフィでは実力の伴っていない、無理がある願望です。
そのために、ルフィはマゼランの猛毒から生還するために自分の生命力を削ったり、
頂上戦争中に一度倒れてしまい、
イワンコフからのテンションホルモン投与がなければ動けなくなるほど疲弊しました。
しかしながら結果的には、ルフィの体に無理をしたツケが回って、
力尽き気絶したのはエース死亡後です。
はっきり言えば頂上戦争に殴り込むという行為の無謀さに対して、
ルフィが失ったものは特にありません。
エースの死亡はルフィの実力不足というより、
あの時点で赤犬の言葉を聞き流せなかったエース個人に原因があるはずです。
このことは、新世界到達前のルーキーが無理を押して、
世界の頂点たちの戦いに殴り込んだことの代償としては釣り合っていないと思います。
散々無理をして処刑台からエースを救い出すことができたものの、
そこで無理がたたって動けなくなり、赤犬に狙われたところをエースが庇って死亡する。
その流れの方が、二年前のルフィが実力不足であることの説得力やルフィの苦しみに重みが増すと思います。
また、白髭が家族だと考えるエースのために海軍本部という強大な相手でも、
構わず戦争を起こしたように、エースが家族だと考えているルフィのために、
赤犬の受ければ死ぬとわかっている強烈な一撃から身を挺して庇うのであれば、
エースが白髭の精神性を継いでいる、お互いが望んでいた家族、息子の関係性であったことの証明になったと思います。
主に、無理な行動に対してルフィが払った代償が少ないこと、
そのせいでテンションホルモン注射の下りが茶番になっていることなどの理由で、
私はエース死亡の流れに少し不満を持っています。
頂上戦争は尾田先生的にはじっくり描きたかったけど編集の指示で巻いた・・・。
と、どこかのインタビューで言ってた記憶があるんですが、
もしそれが事実なら担当の人はGJだったなと。
もしやりたいようにやらせてたら頂上戦争だけで2~3年かかっていたかも知れないし、
それだけ展開も何がやりたいのか分からずグダグダしていたかも知れません。
ぶっちゃけキャラクター達の性格に一貫性が無いのも無駄に時間をかけてるからで、
その間に作者さんが忘れる・もしくは新しい設定を生やすせいだと思ってます。
ただ、もしかしたら頂上戦争が高評価だった為に、
戦闘描写をブツ切りにする事を覚えてしまった
(そうした方が読者に評判がいいのだと勘違いしている)のかも知れませんね。
エースに関してはもし生きていたらというif漫画を描かれている時点で、
尾田先生本人も名残惜しさはあるというか、
その後も要所々々でエースを出しているので、
めちゃくちゃ後ろ髪引かれてるなといった印象です。
ファンサのつもりかも知れませんが、死んだキャラにどんどん余計な肉付けするのは死体蹴りに等しい行為なのでやめて欲しいです。
あと、大将の強さも曖昧です。
私は大将が強いのは身体能力や覇気が強いからではなく、
ロギアだから強いと思っていました。
なぜならルフィが青キジとの対決で惨敗したのも、
青キジの身体能力や覇気が強いからではなく単純にロギアだからでした。
パンクハザードでドフラミンゴが、青キジが現れたときも余裕でしたし、
ドレスローザで藤虎にも「消えて貰おう」と言っていたので、
大将の強さは七武海か四皇の最高幹部くらいの強さだと思っていました。
しかし、エッグヘッド編で黄猿VSルフィから、
大将の強さは七武海や四皇の最高幹部よりは強く、
ニカルフィに負けたことから四皇よりは弱いとわかりました。
なぜ大将の強さがわからなかったかというと旧大将3人はロギアであり、
パラミシアの藤虎も戦闘描写が少なく大将の強さがいまいちわからなかったのも原因です。
ワンピースは強さを表現するのが難しいのかもしれませんが、
ドラゴンボールみたいに戦闘力を数値化できないので、
強さを表現するのは難しいかもしれません。
道力というものはありましたが死に設定になりましたし。
そもそも、四皇のビッグ・マムがたかだか最悪の世代2人に負けたのもおかしいし、
2人がかりとはいえ四皇を倒したキッドを、
同じ四皇のシャンクスがワンパンで倒すのはあまりに整合性が取れていません。
これではシャンクスが四皇の中で最強になりカイドウ、ビッグ・マムとは何だったのかということになります。
あまりにご都合主義に強さがコロコロ変わるので、
強さについてもあまり真剣に考えない方がいいかもしれません。
だとするとこの漫画のいいところは何なのかというと、
前向きになれる言葉が多いので落込んだときとかに読めば元気になれるのと、
泣けるシーンが多いので人に感動をもたらすということですかね。
エースだけに限らず、
自分が馬鹿にされることと、大事な人が馬鹿にされることはわけが違います。
シャンクスも、自分が酒をかけられた時点では笑ってたけど、
ルフィに手を出されたら絶対に許さなかった。
ルフィも、ジャヤで自分達が馬鹿にされた時点では一切手を出さなかったのに、
クリケットさんのためにベラミーを殴った。
いつも逃げ腰のウソップも、ルフィを馬鹿にされたときは立ち止まり、逃げません。
他人からは「悪口ひとつ」に見えるかもしれません。
でも、エースにとっては「悪口ひとつ」ではなかった。
絶対に許せないことは誰にでもあり、人によって違います。
エースと同じ気持ちになる必要はありません。
自分にとっては何の意味も持たない他人の誇りも、
その人にとっては命をかけて守る価値がある場合がある。
それを知っているだけでいいです。
最初にルフィが勝手な理由で追いかけてきて、最後までそれの延長だった。
普通の人なら踏み込んでくれない場所に、ルフィが踏み込んでくれた。
という、結局ルフィの話なんです。
もしエースがルフィと出会わなかったら、出自のせいで性格のねじまがったエースは誰からも愛されることのない人生を送っただろう。
というところを、欲しかった生き方を見つけて、大事な人を守って、
愛されて一生を終えることができた。
それは、全部ルフィと出会ったせい。という話です。
初登場時はこう思わせられたはずです。
しっかり者の兄であるエースは、ルフィの人生においては、少し先の目標でもあるのだろうと。
実は、そうではなかった。
エースの方がルフィに生かされていたのです。
それが途中でわかるのが、めちゃくちゃに「ONEPIECE」ってカンジがする。
私は信者だから褒めるけど、
この漫画は、こんなにキャラを出しまくりながら、
こんなに複数の人生を描きながら、「主人公はルフィである」ところから絶対にブレないんだぜ。
何者でもなく生まれ、無邪気に進み、色んなものを得てきたルフィ。
対照的に、生まれたときに背負っていたものが一番重く、
そこから逃げようとする旅を二十歳で終える、ずっと人生を逆走してきたエース。
自分でどうすることもできない出自のせいで世界中から憎まれ続け、
逃れられない宿命のなかで生きていたエースを「弟だから」という単純な理由で頼り、
どこまでも追って来てくれるルフィの存在が、彼の人生を救ったのです。
白ひげは確かに「おれを置いて全員逃げろ」って船長命令を出しましたが、
そもそもエースって最初から白ひげ一味の言うことずっと全然聞いてないじゃないですか。
それでも、全然構わず助けに来てくれてるような人たちですよ。
この一味にとって、言うことを聞くとか聞かないとか、全然関係ないんですよ。
白ひげを刺したスクアードまで愛してくれるんやぞ。
この海賊船の形態というのは、親子であって、家族です。
言うことを聞かない息子、早とちりで親の贔屓を疑う息子、いるでしょう。
「馬鹿な息子を、それでも愛そう。」
船外の人間から家族ごっこと野次られようが、
この男の下に自ら集まった男たちは紛れもなく、そのスタンスの賛同者です。
自分の行いに納得ができず、償いとしてその場に残ろうとしたスクアードも、
白ひげは止めようとはしませんでした。
白ひげは常に、息子にとって気が済む道を選ばせてくれるのです。
その結果など関係なく。
こんな船長のもとで、行きたくないのに無理やり連れて来られた奴なんか、いるだろうか?
この親のスタンスでこれだけの人間が集まっている。
それは、自らの意志で来ているということです。
もちろん、エースを助けたくて来ている人ばかりではないでしょう。
そのような配下の海賊たちは、
まさしく白ひげという男のために命をかけて、ここ頂上戦争に来ていると思います。