ライフワーク

手塚治虫と鳥山明をつなぐミッシングリンク

手塚先生は日本の漫画・アニメを生み出した神様といってもいい。

そして鳥山先生は世界中でもっとも人気ある作品を作ったといってもいい。

どちらも漫画界では神レベル。

尾田さん、彼もまた偉大な漫画家には違いないです。

手塚賞を受賞した時にうますぎる、僕の後継者だとコメントしています、

手塚さんが嫉妬深いのは有名ですが、デビュー前の新人に対するコメントですから純粋な感想だとおもいますよ、

手塚さんが嫉妬するのは、どちらかと言えば劇画よりの漫画が多かったので。

鳥山明先生はやはり漫画界の神です。

・手塚治虫「ちょっと上手すぎるよね」「彼は僕の後継者」

・荒木飛呂彦「鳥山先生の絵は、漫画家からするとちょっとした発明のようなもの」

・井上雄彦「鳥山先生の絵は漫画家からすると魅力的すぎるんですよね。マネしたくなる気持ちもわかります」

・冨樫義博「嫉妬するほど上手い」

・いしかわじゅん「漫画としての絵という意味で言えば、鳥山以上に上手い漫画家はいない」

・夏目房ノ介「漫画界には大友・鳥山以前と大友・鳥山以後が存在する」

・尾田栄一郎「神様。ディズニーより上手い」

・小林よしのり「デフォルメが上手い漫画家は、 わし以外には鳥山明くらいかな」

・真島ヒロ「鳥山先生みたいに絵が上手くなりた いです」

・ジョージ・ルーカス「彼のイラストを見た時は驚いたよ。素晴らしい。 本当に日本人が描いた絵なのかと思った」

・ジェームズ・キャメロン「鳥山明のファンなんだ。彼の絵を見るとワクワクするんだ」

・シド・ミード「鳥山のセンスは素晴らしい。世界中探してもこれだけのデフォルメセンスを持つイラストレーターはいない」

・トッド・マクファーレン「鳥山の何が一番凄いのかと言えば、あの色彩センスと画材選択の素晴らしさだ」

・ エミネム「ドラゴンボールの作者に俺のアルバムジャケットを手がけてほしい」

・アンソニー・キーディス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズの VO) 「日本に言った時に欲しかったドラゴンボールの画集を買ったんだ。 満員電車にも乗りたかった」

・鳥嶋和彦(元ジャンプ編集長) 「彼の絵に関して「基本的な絵の勉強を漫画ではなく、 デザイン画などから学んでいるため、バランス感覚が優れている」 「トーンを使わないので、白と黒のバランスを取るのが非常に上手い」 「背景などを描かなくても画面が持つだけの構成力とデッサン力を持っている」

鳥山先生自身は絵を描くことが好きで、腹を空かせながら漫画を描くのを唯一の楽しみに。

欲しい物があるとそれを手に入れるまで、あるいは興味がなくなるまで絵に描き続ける癖。

当時通っていた絵画教室で描いた『101匹わんちゃん大行進』が表彰されたことで自信を持った。

一番影響を受けたのはディズニーアニメであり、『101匹わんちゃん大行進』にディフォルメの影響を受けて毎日模写をしていた。

愛知県立起工業高等学校のデザイン科に進学。

地元の広告関係のデザイン会社にデザイナーとして就職。

退職後1年間はアルバイトでイラストを手掛けていた。

手塚マンガと言えば当時は誰もがマネをして、多くの子供たちがひたすらにその画を描いていました。

漫画家の中でも手塚クローンが増殖し日本中を席捲するほどに、

若き漫画家たちはみんな手塚タッチに憧れました。

ご存じ藤子先生、石ノ森先生の初期の頃は、まんま手塚タッチでしたし、

あのシュールレアリズムの天才、つげ義春先生ですら手塚タッチでした。

本当に一時期は日本中が手塚タッチの影響下にあったといっても決して過言ではありません。

むしろ戦後の漫画界で手塚タッチに影響を受けていない方が、珍しいくらい手塚治虫の描く画風は大きな衝撃を与えました。

大人から子供まで、素人から玄人まで、親しみやすく誰もがマネしたくなるデザイン、

それが手塚治虫が描く絵の魅力だったわけです。

その系譜で見ると、誰でもマネしたくなるデザインと言えば鳥山先生ではないでしょうか。

多くの読者が一度は学生の頃に「ドラゴンボール」を筆頭に鳥山先生の絵を描いたことがあるのではと思います。

特に鳥山作品の初期の頃などは丸みを帯びていて愛らしく多くの人が模写したくなるデザインでした。

素人だけではなく後のマンガ家も鳥山明っぽい画風が乱立しましたし、

とにかく素人も玄人もみんなマネするほど魅力的なデザインが鳥山タッチの特徴と言えます。

そして何より、実際書いてみると意外に難しい。

非常にシンプルな絵柄なので、つい自分でも描けるんじゃないかなって、思っちゃうんですけど描けない。

これは手塚タッチにも言えるんですけど描けそうで描けないんです。

これぞまさにシンプルが故に洗練された曲線美。

完成された美しさを両者は纏っているんです。

事実、鳥山先生は小さい頃に手塚先生を尊敬しており、『鉄腕アトム』に登場するロボットを毎日いたずら描きしていたそうです。

ひたすらにアトムを描きまくって、描きまくって気づいたことは、

「簡単そうでやたら難しい、今思えばこうして絵心がついたと思う」と、

手塚タッチに魅了された一人であることを明かしており、

多くの人が感じる印象と全く同じ印象をもっていたことが伺えます。

そして鳥山先生の代表作である、『Dr.スランプ』の中にはパロディでアトムが登場しています。

「オボッチャマン」のデザインは『鉄腕アトム』のオマージュだと鳥山先生自身が公言しておられますし、

さらに『ドラゴンボール』の孫悟空の髪型も『鉄腕アトム』の影響を受けていることも明かしています。

そして手塚先生が影響を受けたディズニーのイラストにも影響を受けています。

なのでルーツが手塚先生と一緒でもあります。

「手塚作品がなければ今のボクはない」

と他の巨匠の先生方と同じくご自身で公言されているように、

手塚タッチに影響を受けた手塚治虫の系譜であることは間違いありません。

しかし単に手塚の系譜というだけではなく、

鳥山先生はさらに、この手塚タッチに革命を起こします。

ここが他のマンガ家さんたちと大きく違うところです。

それは「骨格ありきのデフォルメスタイル」を完成させたのです。

手塚タッチの源流は手塚先生本人も説明しているように、

マンガ的手法がその土台となっています。

「マンガとはなんでもありの世界」

キャラクターは伸びたり縮んだりゴム人間のようなものと語っており、

アゴが外れたり目玉が飛び出たり手や足が何本にも見えたり、

現実世界では不可能な表現デザインが主流でした。

ところが鳥山先生はその圧倒的な画力で、

手塚タッチを引き継ぎながらも骨格表現を取り入れました。

これが後の漫画界に凄まじい革命を起こすことになるんです。

手塚先生のマンガ的デフォルメ表現に人体構造、骨格表現、

つまりマンガを人体模型的に描いて見せたわけです。

この骨格表現の導入により鳥山タッチはマンガっぽいのに、

やたらリアリティがあるというキャラ特性を生みました。

デフォルメ表現なのにリアルさがあるというこの表現は、

ある種のマンガ革命となり鳥山明の登場以降、

マンガのキャラデザインには骨格標本も用いられるほど、

今日ではマンガ表現の主流とも言える表現形態となっていきます。

奥歯を初めて描いた漫画家ともいわれていますね。

これは鳥山先生が元々モデラー造形師出身だからとも言われており、

デザインが造形ありきなので立体的で、歪みが無い。

彫刻的なデザインなのでどんなにデフォルメされていても均整がとれているんですよね。

鳥山先生のデザインに美しさや心地よさを感じてしまうのも、

人間が感覚的に感じる平衡感覚を持ち合わせているからなのでしょう。

ちょっと余談になりますが、

鳥山先生の後継と言われている『ワンピースの尾田先生は、

骨格デザインを継承しながらも手塚流のゴム人間を描いてヒットしているという、

ハイブリッドな作風なのはどこかシンクロニシティ的な系譜を感じてしまうのはボクだけでしょうか。

というわけで、手塚タッチを源流としている鳥山先生の「画風」においては、

単なる絵が上手いだけではない、手塚治虫の系譜を受け継いだ後継者のひとりであると言えると思います。

そして「擬人化キャラクター」、これもすごい。

人間ではない擬人化した動物キャラクターが多いのも両作品の特徴です。

手塚先生の描く動物キャラは天下一品の国宝級。

これはもはや名人芸の域にあります。

手塚治虫ほど精密に、

そして愛らしく動物キャラを描ける作家は見たことがありません。

これは断言して言えますが、

手塚先生より絵が上手い作家はたくさんいますけど、

手塚先生より可愛い動物の擬人化キャラを描く作家さんは未だ見たことがありません。

あくまでもデザインという個人的主観論を含んでいるとはいえ、

それでもやはり手塚先生は別格だと思います。

たとえ手塚賞のときの発言がリップサービスであったとしても、

手塚先生が審査委員長を務めていた「手塚賞」の審査員に鳥山先生を直々に選んでおりますのでかなり意識していた事は間違いないでしょう。

鳥山先生の『ドラゴンボール』だけを見てしまうと、

どうしても手塚治虫の後継者というにはちょっと無理があると思います。